履修生によるフィールドワーク紹介 柿沼拓弥

今年度のプロジェクト研究Eは、沖縄社会を対象として研究を行っています。フィールドとなった石垣島は、沖縄本島ともまた異なる文化が根ざす八重山地方にあり、研究に事欠かないテーマの宝庫です。

このプロジェクト研究では、自分自身でテーマを設定し計画を立て、主体的に行動することが求められます。質的調査がメインになるので、地域の人々とのかかわりを得ることが肝要です。とくに、観光が盛んな石垣島では、傍観者でいようとするとさながら観光客になってしまい、相手の接し方もそれに対するものになってしまいかねません。しかし、一歩前に踏み込めばよろこんで様々なことについて語ってくれるのがこのフィールドの魅力でもあります。

私は、初対面の人に聞き取りを行うことが苦手でした。フィールドは同じといえど基本的に単独で行動する今回の調査でも初めは戸惑いましたが、ひとたび島の人に話しかけてみると、彼らは実に親切に応じてくださって、たいへん驚きました。そうしたかかわりの中で、貴重な情報や資料はもちろん、臆することなくアプローチする度胸や、聞き取りの際の対話の仕方を実践の中で鍛えることができました。

現地に赴く前に、私は石垣島の水と文化についてというテーマの当たりを付けていました。島のあちこちに井戸があり、生活と結びついていたことは調べてあったのですが、実際に石垣島の井戸を訪ねてみると、ほとんどの井戸が使われなくなってしまっていたことには愕然としてしまいました。

しかし、それでもなお私の興味を引いてやまないのは、それら使われなくなった井戸が、にもかかわらず原型を留めて残されている事です。公道のど真ん中やアパートの敷地内、はては郵便局にまで存在しているのは、実に不思議な光景です。人々からは埋めてしまうと祟りがある、といった理由も聞かれるのですが、到底それだけで説明しきれる現象ではないと考えています。

行政としても井戸に何がしかの魅力を感じていることは確かで、2014年の春には、島内の5箇所の井戸が「まちなか親水広場整備事業」として、市民の憩いの場・観光スポット・非常用水のための井戸として整備されています。この動きはとても興味深い研究材料です。

島の人々にとっては、ここに井戸があることは普段見慣れた「あたりまえ」の風景であるため、「何故ここにあるのか・残されているのか」といった問いをただ投げかけるだけでは、なかなか答えは見えてきません。自宅に井戸を持ち、また島の井戸に強く関心をもった方と出会えたことは僥倖でした。

何気なく井戸と接している人々や、井戸に造詣の深い人、市役所という行政機関、そして島外からやってきた調査者たる私。これらのそれぞれの目線から総合的に考えることで、今日の石垣島において井戸とは一体なんなのか、この問いに考察を与えるための報告を作っています。

郵便局の敷地内にある井戸。利用できる状態にはなっていない。
路地の三叉路にある井戸[カジヤーヌカー]。市の事業で整備され、蛇口がついた。

(柿沼拓弥)

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