履修生によるフィールドワーク紹介 上野彩

私は今回、石垣島における医療とユタの関係性について聞き取りを行いました。「医者半分ユタ半分」―これは沖縄に伝わることわざの一つです。その言葉は、もともと医療社会学に関心をおいていた私にある疑問を感じさせました。なぜこの2つが対称のものとして同じ土俵に並べられているのか。医療者にとって「ユタ」(注:職業的女占い師)とはどのような存在なのか。私は、「医師はユタに対して否定的であり、ユタも現代の医療に対して否定的であろう」と思っていました。

しかし、今回出逢った一人の医師はこう言っていました。「医師の僕らにはできないことができたりする人がいてもいいと思う」。他に2名の医師にインタビューしましたが、その2名ともユタが島の人々の健康・治療にもたらす影響について否定的な意見は持っていませんでした。

また、ユタ買いをした男性からは自身の体験談をきかせていただきました。その男性の親御さんは数年前に医師から余命宣告を受け、それが男性とユタが出逢うきっかけとなりました。しかし、男性の親御さんは宣告された通りの時期に最期を迎えました。そのことを聞いて私は「じゃあ…ユタにいっても意味がなかったと感じましたか。」と尋ねましたが、男性の答えは次のようなものでした。「自分にできることをやりきってあげることができたから…うん、やってよかったと思う。結局結果は変わらなかったけど、うん、やってよかった。」。

他にもユタ買いをしている2名と島に住んでいる人々数名に話をきかせてもらいました。もちろん出逢った方全てがユタを肯定しているわけではありませんでしたが、ユタは私が考えていた以上に島の人々から厚い信頼を得ていました。私はまずそのことに驚きました。私はこれまでの人生でユタにお会いしたこともなければ、その存在さえ知りません。同じ国にいながらにして、こうも異なる文化があるのか。その時の衝撃や感動は言葉で表せるものではありません。そして、前述の通り、フィールドに入る前の私の仮説は見事に打ち砕かれました。今後どのように報告書を作成していくのか、私自身の研究者としての腕が試されることになるでしょう。

また、話は変わりますが、私はプロジェクトEそのものに助けられたことがあります。それは、フィールド滞在中に毎晩行われたミーティングです。プロジェクトEは、各々が個人の関心を持ってフィールドに入りますが、だからといってフィールドで得た情報が、その人個人の研究にのみ有益であるとは限りません。その地域の文化や独特の現象についてその日見聞きしたことを報告し合うのはとても刺激になりました。実際に私は調査員の先輩の報告から、自分の研究に関するヒントをもらいました。そこに加え、先生方からのフィードバックがあります。このような体制のおかげで、私の問題意識は日に日にクリアに、そして深くなっていきました。6泊の滞在中、石垣島からはもちろん、プロジェクトのメンバーから受けた刺激も大きかったです。もし機会があるのであれば、来年度も、いや毎年参加したいと心から思います。

(上野彩)

一覧へ戻る

トップに
戻る