履修生の学会報告 上野彩

石垣島のシャーマニズムと医師

2015年5月17日、日本保健医療社会学会(第5セッション「社会・文化と医療」)にて口頭報告を行った。発表では、八重山諸島・石垣島での、近代医療の医師と伝統的代替医療の専門家であるユタへのインタビューを通して、それぞれの医療的概念の受容と反撥があることを明らかにし、医療体系が多元的に存在している状況について紹介した。その上で、統合医療という観点から、石垣島において複数の医療が共存している有り様について考察を行った。統合医療とは、単なる併用ではなく、“combination”であり、近代医療と補完・代替医療、それぞれの長所を活かし、短所を補完しながら疾患の治療や予防・治未病・健康増進などを図る全人的医療である。

沖縄に伝わる諺で「医者半分ユタ半分」がある。これは医者が治せる症状とユタが治せる症状が半分ずつあることを意味している。ユタとは沖縄にいるシャーマンで、その多くは女性である。彼・彼女たちは、個人の不安や宗教的ニーズ応じて、災因の追及や占い、予言、病気治療を行っている。近代医療と伝統的代替医療が共存している地域で、後者の教育を受けていない医師が土着の文化であるシャーマンをどのように解釈し、どのような関係性にあるのか。それを明らかにすることを目的に調査を行った。

本報告は石垣市内に勤務する3名の医師のインタビューを中心に2つの医療がどのような関係性にあるのか、という点に注目し分析した。その結果、3名に特に3つの共通点が見られた。一つ目は、近代医療と伝統的代替医療の翻訳が可能な部分【重層性】である。二つ目は翻訳不可能な【医師の領域】である。三つ目は、医師の思うユタとユタの考えるユタに見られた【齟齬】である。

石垣島では、近代医療と伝統的代替医療は協同せず、衝突せず、その地域で機能している。本報告では、インタビューでの医師の語りに注目することで、石垣島で近代医療と伝統的代替医療がうまく機能している現状を明らかにできた。今後は、医師が【医師の領域】、ひいては医療の有限性を自覚するまでのプロセスに注目しながら、調査・分析していきたい。

(上野彩)

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