小泉ゼミ

担当者:小泉 元宏 准教授
アートや創造性と、社会形成

フィールド調査のようす(台湾・台北現代芸術センター)

近年、「創造性(creativity)」に対する社会からの着目が強まっています。このようななかで、かつて(美術・音楽・映画・演劇などの)アート(arts)やアーティストに求められていたような「創造性」は、日常的に、社会の誰しもに求められるものとなっています。例えば、就職活動や会社のなかでの競争などにおいて、「個性」や「独自性」が強く求められる傾向は、その一例でしょう。

このような傾向の背景には、どのような社会状況が存在するのでしょうか。その一つには、国や自治体、企業、NPOなどが、新たな物事を生み出す能力としての「創造性」を、国や都市・地域、産業の活性化といった社会的目的に生かそうとする動きがより盛んになっていることが挙げられます。「クールジャパン」や「創造都市」、「アートによる地域活性化」、「クリエイティブ産業」といった言葉が、しばらく前から流行していることに見て取れるように、「創造性」こそが、国家や都市・地域を魅力的なものへと変えたり、地域再生を図ったりする切り札だ、あるいは、他社・他者との競争に勝ち抜く方法だ、とする考えが、より広がりを見せており、それに見合う人々が求められているのです。

しかし、このような社会は、逆に言えば、(社会的目的に合わせて求められる)創造性を持っていないとみなされる人々にとっては、より生きづらい社会であるともいえます。特定の目的に見合う創造性を持つ人々が強く求められる社会とは、それ以外の人々を排除する社会とも言い換えられます。

フィールド調査のようす(香川県小豆郡土庄町・豊島)

では、どうしたらこのような(社会的目的に合わせて求められる)「創造性」の有無による排除の問題を解消していけるのでしょうか。近年、一部のアーティストやデザイナーなどが、先駆的に進めている活動のなかには、その解決へのヒントが見て取れます。彼らは、単にアート作品制作などを行うことを目指すアーティストではありません。人それぞれが持つ(現在の社会には求められないが興味深い)個性を組み合わせ、ぶつけ合わせることによって、新しい社会の方向性を作っていく「媒介者」のような立場の人々です。例えば、異文化間やコミュニティ間をつなぐことで新たな文化生産や社会活動を起こしたり、協働やシェアによって支えられる新たなライフスタイルを構築したり、といった方法によって、彼・彼女らは、不平等な社会構造や硬直化した制度を変えていこうとしています。(社会的目的に合わせて求められる)「創造性」の有無による排除の問題構造を解決することを模索しているそれらの動きには、我々が生きる社会に対する重要な示唆が含まれているのではないでしょうか。

小泉研究室では、近年の創造性をめぐる社会の動きの背景に、いかなる社会構造や思想性が含まれているのか。また、それらの問題点はどこにあるのか。さらには、それらの社会構造や問題点を解決していくにはどうしたらよいのかを、次のようなアプローチを通じて検討していきます。

  • 文献研究(文化政策研究、文化社会学、現代芸術論などに関する文献を読みます)
  • フィールド調査(都内各所のほか、瀬戸内地域、新潟、鳥取、台湾、ロンドンなど。フィールドは年度によって変わります)
  • アートに関わる実践活動への参加

研究室に所属する学生は、アートとまちづくり、クリエイティビティと政治・エコノミーの関係性、表現活動を通じた新たなライフスタイルなど、各自の興味関心に基づいた研究を行うことができます。

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