教員インタビュー

社会学科、
小倉 康嗣 准教授に聞く、15の質問

Q.1 今までの経歴を教えてください。

慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、厚生省(現厚生労働省)に入省しました。実はそこで社会学との出会いがあったのですが、「こんな自由な学問があったのか!」と魅せられ、厚生省を辞めて社会学専攻の大学院に入りなおしました。慶應義塾大学大学院で社会学の博士号を取り、長い非常勤講師生活を経て、2013年に立教大学に着任しました。

Q.2 どんな学生でしたか?

僕自身、あるマイノリティ性を背負って苦悩しながら、それを誰にも悟られないようにしていたので、表面的には明るく立ち振る舞いながらも、内面は鬱々としていました。「生きてちゃいけない人間だ」「生まれてきてはいけない人間だったんだ」とずっと思い詰めていましたから。でも、その苦しみが、いまの社会学との出会いにつながっていきました。

Q.3 専門の研究領域について教えてください。

ライフストーリー研究をベースに「生の社会学」を基本的なテーマとして調査研究しています。他者の人生をインタビューし、その人(語り手)の生きられた経験を理解せんとしていくなかで、聞き手である自分自身の生をも問われ、その相互行為の積み重ねから生みだされる人生の物語=ライフストーリーから、現代社会における生と社会のありようについて洞察・考察していく質的調査研究です。特に、受苦的経験から生成されていく生と、それが創造的な契機となって社会を変えていく、そんな局面に関心を寄せて研究しています。

Q.4 担当している授業の内容について教えてください。

「コミュニケーション論」「質的調査法」「震災のフィールドワーク」といった授業を担当しています。「震災のフィールドワーク」では、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田、唐桑、大槌を学生とともに訪ね、現地でできることをお手伝いしながら、現地の方々のライフストーリーのききとりを行っています。東日本大震災に対して、社会学部生は何ができるだろうかと考えたときに、学生が現地の方々と関係を育みながら生みだされる震災経験の生きた語りを、貴重な経験的遺産として受けとめ、記録し、後世に残していくことなのではないかと思ったのです。

Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。

「ライフストーリーの社会学」をテーマに、ゼミ生各々の問題関心からフィールドを見つけてライフストーリー・インタビューに取り組んでいます。特に「生き方としての学問」ということにこだわっていて、ゼミのスタート時には数回をかけて詳細な対話的自己紹介をみんなで行っています。学問ないし研究という営みは決して価値中立的ではありえず、研究主体である「私」の価値観・関心・思想・経験・欲望、つまり生き方が反映します。と同時に、研究したものは、研究主体である「私」の生き方に跳ね返ってきます。それと向きあうことが、学問・研究を実践していくうえで重要だと考えるからです。

Q.6 ゼミを通して学生に伝えたいことは何ですか?

自らの「原問題」を大事にしてほしい。「原問題」とは、研究のために戦略的に設定する問題やテーマの根っこにあって、おのれを突き動かし、生きるための課題として自覚されてくる深層の問題意識です。大学は「勉強」ではなく「学問」をするところです。勉強は「強いて勉める」と書きますが、学問は「問うて学ぶ」と書きます。予めできあがった教科書の情報摂取に「強いて勉める」勉強とは違って、学問は、自らが生きダイナミックに動いているこの世界のなかに「問う」自分自身が入りこまないと実践できません。「問題意識に禁欲は禁物だ!」と常々言っています。

Q.7 指導する上でモットーにしていることは何ですか?

自らの「原問題」に降り立って問いを練りあげていくことと同時に、一見対岸の火事に見える他者の問題も自分が抱えている問題と地続きなんだということを理解し、自らに切実な問題として捉えていく社会学的想像力をいかに喚起するかです。そのために、表面的な議論の完成度よりも、迷いのようなものも含めて正直に対話することを重視しています。

Q.8 学生には卒業後にどのような人に育ってほしいですか?

あえて愚直な人になってほしい。いまの時代、愚直であることは難しいですから。社会がショー的になってしまっていて、つまり中身よりも見てくれや対外的な評価を良くすることばかりに汲々としていて、実質的なことが疎かになっている。だからこそ、意志して愚直になれる人になってほしいと思います。「断じて行わざるもまた勇なり」です。

Q.9 社会学の魅力は何ですか?

自分をがんじがらめにしている枠に切りこみを入れ、そんな枠がなくたって「これでも生きられるんだ」という大海原を気づかせてくれるところです。僕自身が、そういう社会学に救われてきました。

Q.10 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?

不器用な人かな。社会へのそぐわなさを感じたり、居心地の悪さを感じたり、悶々としたり……。耳触りの良い、わかりやすい物言いに引っかかりを感じてしまう人。そしてその感覚と、ごまかさずに素直に向きあえる人でしょうか。

Q.11 大学生活を送る上で最も大事なことは何だと思いますか?

ものごとを「なんのために」という根本的なところから、流されることなく、丁寧に、深く沈みこんで熟考・熟議すること。社会人になると、じっくり考えるよりも前に近視眼的・目的合理的に動かないといけない場面が多くなりますから。そういった状況に振り回されない胆力を、大学生活で培ってほしいと思います。それが生きる力につながっていくと思うので。

Q12 立教大学のキャンパスの好きなところを教えてください。

四丁目と呼ばれる中庭です。歴史の積み重ねを感じる建物と木々の緑のなかを通り抜けて研究室に行くのが好きです。

Q.13 学生におすすめしたい本を教えてください。

『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』(安積純子・岡原正幸ほか著)です。僕が厚生省を辞めて社会学の道に入ろうという決意を決定づけた本です。自立生活する障害者の生活世界をフィールドワークしたものですが、障害者ではない僕が「そこに僕がいる!」と感じた本でした。いつのまにかエンパワーメントされている自分がいて、こんな感覚をもたらしてくれる社会学ってスゴイと思いました。

Q.14 “学ぶ”ことの意味は何だと思いますか?

学ぶことによって、自分をがんじがらめにしていた枠に切りこみが入ったときの快感と、沸々と湧いてくる生きる力。それに尽きます。

Q.15 最後に高校生へのメッセージをお願いします。

そもそも大学とは、ものごとをなんの制約もなく根本的に考えることのできる理想空間で、そのためだったら失敗も超OKな場です。一生のうちにこんなに恵まれた時間と空間はありません。それを存分に活用し、大いに失敗し試行錯誤しながら、自分にとって価値あるものにしていってほしい。そんな“心意気”を期待しています。

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